First Creation 2007/08/24
Last Update 2007/10/19
Bloody Mary > Column > 2007/08/24 - Friday

CCNA 受験記

風邪を引きました。 1 ヶ月も。

3 月

事の起こりは 3 月だった。極貧生活に苦しんでいたオレは、会社に給料上げてくれと要求したところ、「 CCNA の資格を取れば資格手当をつけてあげるよ。ついでに MCP も取って。夏までね」とか言われ、「MCP ってなんだよ、聞いたことねぇよ」「CCNA ってオレの仕事に関係あるのか」とか考え込んだ。「今年からそういうルールになったんだからしょうがないよね」と言われても雇われの身としては「はぁ」と言うしかないわけで、「取れば上がるんだから取れるでしょ」「ウチに箔がつくんだから早く取って」と説得にもなっていない脅迫をされ、ビミョウに納得いかない思いを抱きつつも、ついには某宗教団体の信者のように「そうか、取れば上がるんだから取ればいいのだ」と洗脳され、資格を取ろうという結論に誘導された。ルールを作る方は気楽でいい。オレが首相になったら都合いいように法律を塗り変えてやる。

「じゃあ取りますよ。取りますけど、どっちが面倒なんですか」と聞くと CCNA だという。ショートケーキの苺は気分次第で前にも後にも食べるオレは、たまたまそのときの気分で面倒な方から狙うことにした。

後日、参考書を購入した。確か、「 CCNA 教科書」とかいう学生時代の悪夢が甦ってきそうな名前の本だった。何のつもりか知らないが、 500 ページもある。下手したら義務教育の教科書よりたちが悪い。

4 月になり、その後、勉強を始めたかと言えばさにあらず。 4 月から 5 月にかけては、研修の講師を担当することになってそっちの準備で忙しく、勉強どころではなかった。研修が終わり、 6 月から CCNA の勉強を始めたのだが、そのときになってようやく深刻な事態に気がついた。

6 月

何年もネットワークに携わる仕事をしていながら、その教科書の内容が半分も分からない。当初は、「業務で培った知識をちょっと補ってやればいいんじゃね? 楽勝楽勝」とか考えていたが、甘すぎた。そりゃあハニー・トーストより甘いというものだ。

町の電気屋さんに壊れた DVD プレイヤーを持って行ったら、 LSI ( 集積回路の意味で ) の回路に欠陥があるのが分かって、電子顕微鏡を覗きながら回路を修正させられる羽目になったカンジである。確かにハード故障かもしれないが、町の電気屋さんに直させるには酷な話ではなかろうか。顕微鏡つかって直せるわけないだろ、などと思ってはいけない。

私の場合、今まで使っていた知識はネットワークの IP ( インターネット・プロトコル ) より上が対象だったのだが、、今回の資格で必要とされるのは、 IP より下の知識だった。「ボール、フォア・ボール。押し出し 1 点」意味が分からない。

1 からとは言わないが、 3 くらいから覚え直しである。もう半泣きで読み進めて行くが、 1 ヶ月経っても余裕で終わらない。というかページ増えてるんじゃないだろうか? 誰か増やしてるんじゃないだろうか。イヤガラセはやめてくれ。

ページ数を見ると 250 ページ以上も残っている。さすがに効率が悪いんじゃないだろうかと思い始めた。どうも、読んだだけで暗記できるような頭は持っていないくせに、めんどくさがってベッドに横たわって暗記しようとしているからちっとも進まない。しょうがないから CCNA を習得する上で必須の機器、ルータとスイッチのうち、スイッチを購入することにした。ヤフオクで \3,000 くらいである。学習と実習を交互にやりながら勉強しようという考えである。

7 月

ところが、実機を手にいれたからという安心感からか、今度は勉強する気が起きない。 7 月の中旬に差し掛かったとき、これは締切りを設定しないといつまでも終わらないことに気が付いた。 7 月までに CCNA 、 8 月までに MCP を取ることにする。仙台ではプロメトリックという会社で受験出来るらしいので、さっそく会員登録して 7/31 を CCNA の受験日に設定した。この組織がまたビミョウだったのは、当時のオレには知る由もなかった。

目標を定めれば少量とはいえやる気らしきものがでてくるわけで、強迫観念とも言うが、とにかく実機を使わなければコマンドを覚えられないだろうということで、粗大ゴミ扱いされていたスイッチの箱を開封した。そしてパソコンにつなげようとしたら・・・

ケーブルがねえ!

PC と L2 スイッチをつなぐケーブルが入っていなかったのである。 L2 スイッチはパソコンにつないで初めて設定できて役に立つのであって、設定できないスイッチは単なる緑の箱である。電源をいれてもファンがうるさくて熱いだけで、冬にトイレにおいて置けば暖かいかもしれないが、真夏のこの時期には、オブジェとしての価値もない。しょうがないから再度ヤフオクでケーブルを購入した。 \1,000 もした。おいおい、たかがケーブルだぞ・・・ ケーブルが届くと、ポツポツコマンドを叩きながら教科書を読み進めて行く。

受験日間際、風邪を引いた。その程度なら決して珍しくはないのだが、風邪の症状が強烈だった。今回の風邪は桁が違う。ファン・ガンマ・ビゼンみたいなことを言っているが、本当にそうなのだ。最初は熱が出た。次に声が出なくなった。ここまではいい。だが、咳が出始めてからがヤバかった。まず、夜になると咳き込む回数が増えて、寝られない。寝られないんだよ? 運よく眠れたとしても、明け方に咳で目が覚めてしまう。これが CCNA の受験日後の 8 月初旬まで続いた。キャベツをまるごと食べるといういつもの治療法が効かず、あまりにもつらいので会社からダータ ( 無料 ) で支給され、頭痛薬以外の薬を飲む習慣がないものだから放置され、賞味期限?が切れてしまった風邪薬を飲んでしまったほどである。飲んでもまったく効果はなかったことを付け加えておく。この風邪が原因で 5 日以上も有休を使う羽目になろうとは。おかげさまで貴重な休みが残り少なくなった。

7/31

そんな中、受けた試験は見事に玉砕。 \15,000 が夢と散った。合格点は確か 850/1000 点で、オレの点数は 798 点だった。風邪だけが原因ではないが、とにかくこの風邪を治さないと次の受験もままならないわけで、近所の薬屋にかすれ声で「咳がひどくて眠れない。一番強い咳止めをくれ」と泣きついたら、エフストリンとかいう聞いたこともない薬を渡された。この薬は効いた。一発で治るという訳にはいかなかったが、症状はだいぶ良くなった。何より、夜眠れるようになったのが嬉しかった。それでも、明け方に 1 〜 2 回は目覚めてしまう。

8 月

風邪はかつてないほど長期化していて、ウィルスだか細菌だかはとっくに抗体物質に撃退させられているのだが、喉に炎症を起こし、炎症がオレを苦しめている。たぶんそうだと思うのだが、病院嫌いだからこんな有り様になっても病院には行かず、独自療法を続けているから結局詳しいことは分からない。若干の不安を抱きつつも、何とかなるだろう的な考えでドクター・オレ(私のことだ)の治療を続ける。

そして CCNA 2 回目。完治した訳ではなかったが、オレは復讐の準備を進めていた。まず前回の反省点を洗い出してみる。

一言もの申したい

1 番まずかったのが、シミュレーション問題ができなかったこと。何回か L2 スイッチの設定をしてはいたが、ほんの数回しか設定をしていなかったので、いざテストで教科書も何も見ないで問題を解けと言われても、コマンドを思い出せないのである。

2 番目に、シミュレーション問題が出るのが早かったということ。シミュレーション問題は時間がかかる。最初の方でこれが出てしまうと、試験の残り時間が気になり、飛ばしたほうがいいんじゃないかと言う誘惑に負けてしまう。まあ、コレは体で覚えるくらいに設定をやっておけばいい話か。

3 番目は環境の問題。試験開始前にメモ用紙としてプラ版とサインペンが渡されるのだが、プラ版は交換したいときに試験官を呼ばなければならない。いちいち遠くから試験官を呼ぶのは時間の無駄だから、節約して使うしかない。しかしサインペンがトラップだ。キャップを外すと・・・

これは・・・太くないか? ォィォィ、太すぎるだろう。渡されたペンは、ホワイトボード用のものを間違って渡された、としか思えないほどに太かった。クレヨンよろしく、太すぎて小さな字が書けないのである。結果、サブネットマスクの計算 1 問で片面の 1/4 も使ってしまう羽目になる。たかが計算すら満足にさせない気か。あまりにも酷い。再受験料で稼ぐ気だ。

これらの対策としては、実習を繰り返すこと、細かいところまで覚えること、消しゴム代わりにティッシュペーパーを持参することだった。筆記用具以外は持ち込み禁止と言われるかもしれないが、ポケティだけはなんとしても納得させてみせる。

対策を済ませたオレは試験を予約した。2007 年 8 月から、 CCNA の受験はピアソン VUE という会社が一手に引き受けることになっていた。どおりでプロメトリックから予約できないわけである。

8/24

受験当日、会社をに早退したオレは、たまたま会った上司に昼食を奢ってもらった席でサインペンの太さについて言及し、文句を言ってすっきりした頭で試験に臨んだ。前回は月、火と 2 日に渡って会社を休んだうえ、朦朧とした頭で休んだ日の午後に受験したものだから、それに比べればコンディションはグリーンである。アルフォンスだって起動できる。

15 時からの受験だったが、会場が分からなくて遅刻しても払い戻しはされないらしいので、 14 時に周辺を探し回った。会場は 141 の向かいにある三井アーバンホテルの裏手のビルという話だが、見つけられない。ブロックを一周し、東二番町通りに戻ってきた。暑い中ご苦労なことである。このままではらちが明かないので、近くの駐車場にいたガードマンに聞いてようやく場所が判明した。ホテルの本当に隣のビルだった。こじんまりとしたビルの 3F に入り、受付をする。気になっていたメモのことを聞いてみた。メモ版は 4 枚用意されているとのこと。「すげー、 4 枚もか」とか感動してしまう。ついでにサインペンもキャップを外して見せてもらった。細い。サイコーである。プロメトリックが罰ゲームに思えるほどだ。 15 時の予約だったが、すぐ受けても良いとのこと。ファジーだ、ピアソン VUE 。アンタ最高だよ。 30 分ほど教科書を読みなおし、 14:40 位に試験開始を宣言した。

パソコンの前に座ると、問題が見やすいことに気づいた。前回は問題を上下にスクロールさせないと全文が見られないことがいくつかあったが、ピアソン VUE はちゃんと 1 画面に収まるように工夫されているようだった。マンセー。

問題数は 48 問。合格点は 850/1000 ほど。今回シミュレーション問題は後半の方に出てきた。結果は 987 点。おそらく 1 問失点したのだと思う。とりあえず復讐は果たせたわけだ。開放感で上司に取った点数を報告したら、「それって合格?」とメールが返ってきた。 1 問のミスも許されないような試験はマニアでも受けるのを躊躇するだろうし、オレだってそんなゲームやりたくない。

気晴らしカレー

というわけで、晴れ晴れとした気分でカレーを作った。材料は挽肉、牛肉、玉ねぎ、しょうが、にんにく、パプリカ、トマト、トマトホール缶、そして大量のほうれん草である。最初にトマトピューレを作っておいて、牛肉を圧力鍋で煮込む。ほうれん草を湯がいてペースト状にし、後は材料を放り込むだけ。鶏がらでスープで作る。決めては特製スパイスである。クミン、コリアンダー、カルダモン、ターメリック、カイエンペッパーをベースに、オールスパイスやらディルやら適当に調合していく。かろうじて食べられるものが出来るか、美味いかは半々といったところ。最近は腕が上がったが、まだ失敗もあるから油断はできない。一か八かの大ばくち。味見をするとスープは OK 、美味い。唐辛子を 5 個ほどぶち込んで辛味をブーストさせる。 3 時間ほどかけて完成。最後にスパイスをカレーの味になるまで加える。味が壊れないよう、スパイスを入れすぎないことだ。これがなかなか上手くできた。

さて試食というときになり、何口目かで唐辛子に当たった。まあ捨てても良かったのだが、辛いものが食べたいので食べた。その辛さに眉をしかめ、水を飲もうとしたところ、冷蔵庫にストックしてあった蒸留水が切れた。ふと、カウンターの上のサーバに気がついた。持ってみるとなみなみと入っている感触。はて、いつ入れたのだろう。しかし水が入っているということは、 2 日以内だろうと深くは考えなかった。なぜなら、よく水を飲む私にとって、サーバに水と氷を入れておくのは日常的で記憶にも残らないことだからだ。氷は溶けているだろうから、グラスに氷を入れ、サーバの水を注いだ。一瞬白濁したような気がしたが、水は透明だ。

きっと気のせいだろうと思って水を飲み込んだ。辛さに痺れた舌に気持ちいい。そして喉越しに異様な感覚が伝わってきた。何がなんだか分からなかった。水じゃないなら・・・酒を入れたっけ? 頭の中でプールの映像が再生された。夏だから入りたいってか? いや、そうじゃない。意味が分かった。塩素だ。サーバを消毒しようと思って漂白剤を入れっぱなしにしておいたのだ。

ぐおおお、飲んじまった・・・ヤベーって、絶対。

すぐさまググって漂白剤を飲んでしまった場合の対処法を調べる。「水か牛乳を飲ませて薄める。吐かせてはいけない」と書いてあった。牛乳は・・・あった。賞味期限が切れているが。背に腹は代えられず、牛乳を飲んだ。食道が熱いような気がする。そして胃の中が塩素くさい。気持ち悪さ耐えられず、指を突っ込んで吐いた。牛乳が固まっているから効果はあったのだろうか。あ、吐いちまった。何で駄目なんだと調べたら、食道が傷つくからと書かれていた。オレの精神が傷つくよりいい。

まだ生きているから効果はあったのだ。それ以来、水を飲むときに一口味見するようになった。これも PTSD ( 心的外傷後ストレス障害 )なんだろうか・・・

今日一日を振り返って、これだけは言える。

幸福量保存の法則は、ある。

幸福の大きさは、その人が持つ器に左右されるのだろう。オレの場合は大して大きくないことが分かった。特に知りたくもなかったが。

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